生きるぼくら
一度図書館で単行本を借りて読んだのですが、とても良かったので文庫で購入して再読しました。
文庫本の表紙の絵は、作中に出てくる「ある場所」。
単行本の表紙デザインは別のものだったのですが、私は文庫のほうが好きです。
高校時代のいじめにより、引きこもりになってしまった麻生人生(じんせい)。
母との二人暮らしでしたが、24歳のある日、母が家からいなくなってしまいます。
テーブルに残されたのは、5万円と母宛に届いた年賀状の薄い束。
人生は年賀状の束の中から、小学生の頃に離婚した父親の故郷・蓼科に住むマーサばあちゃんからの年賀状を見つけ、彼女が「余命数ヶ月」ということを知ります。
ずっと疎遠だったけど、大好きだったマーサばあちゃんの近況にいてもたってもいられず(他に頼る人もいなかったため)、お金と年賀状を握りしめて、信州・蓼科へ向かうことに・・・。
この作品がすごいのは、引きこもりや認知症などの社会問題がリアルに描かれているけれど、重くなりすぎず、でもやっぱり考えさせられるな・・・というバランスが絶妙なところだと思います。
世話好きのおばちゃん・志乃さんがとてもカッコいい!
「人生」の先輩として、優しく、時には厳しく人生や”つぼみ”にアドバイスをする姿がとても頼もしいです。
作中でメインとなる「米作り」の過程も、とても丁寧に描かれています。
実際に自分が、蓼科で米作りをして、季節の移ろいを感じているかのようです。
マーサばあちゃんの「自然の田んぼ」でとれたお米のおにぎりを食べてみたい・・・。
蓼科でマーサばあちゃんと暮らす中で、長年引きこもりだった人生が成長していく姿に、自分ももっと成長できる!と勇気をもらえます。
読みやすく、ストーリーも素敵なので、おすすめしたい一冊です。